百花繚乱を待つ庭

桜の季節が終わると。。。

あと、もう少しで庭は百花繚乱。

ムスカリ、花菖蒲、アヤメ、カキツバタ、つつじ、アルストロメリア・・・
毎年、毎年、一斉に咲きだす。

あっ!そうなると、芝刈りも待っておるんだっけ。
芝刈りおばさんは、10日に1回くらいだなぁ。


あともう少し
まだ一見静かな庭も、土の中はエライことになっているのだろうなぁ。


青と黄色の珍しい組み合わせのパンジーみっけ。

すずらんは毎年早目。

ドウダンツツジはつつじの中でもいつもいち早く。

ここにアヤメが群生するんだなぁ。今は葉ばかり。

ムスカリももうすぐ地べた一面を覆う。






『空と土のあいだで』  長田 弘


どこまでも根は下りてゆく。どこまでも

枝々は上ってゆく。どこまでも根は

土を摑もうとする。どこまでも

枝々は、空を摑もうとする。

おそろしくなるくらい

大きな樹だ。見上げると、

つむじ風のようにくるくる廻って、

日の光が静かに落ちてきた。

影が地に滲むようひろがった。

なぜそこにじっとしている?

なぜ自由に旅しようとしない?

白い雲が、黒い樹に言った。

三百年、わたしはここに立っている。

そうやって、わたしは時間を旅してきた。

黒い樹がようやく答えたとき、

雲は去って、もうどこにもいなかった。

巡る年とともに、大きな樹は、

節くれ、さらばえ、老いていった。

やがて来る死が、根にからみついた。

だが、樹の枝々は、新しい芽をはぐくんだ。

自由とは、どこかへ立ち去ることではない。

考えぶかくここに生きることが、自由だ。

樹のように、空と土のあいだで。




『地球という星の上で』  長田 弘


朝の、光。

窓の外の、静けさ。

おはよう。一日の最初の、ことば。

ゆっくりとゆっくりと、目覚めてくるもの。

熱い一杯の、カプチーノ

やわらかな午前の、陽射し。

遠く移ってゆく季節の、気配。

花に、水。

眠っている、猫。

正午のとても短い、影。

窓のカーテンを揺らす、微風。

<わたし>の椅子。<わたし>の机。

忘れられた価値を思い出す、本。

龍やかいじゅうたちの、絵本。

パンの神の午後の、音楽。

樹上の鳥の鋭い、声。

高い、青い、空。

沈む陽の、箭。

すべて昏れてゆくまでの、一刻。

夜のための小さな、明かり。

月下の仄かな、闇。

住まうとは幸福な一日を追及することだと

<わたし>は思う。<あなた>は?